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水戸地方裁判所 昭和40年(わ)238号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕(罪となるべき事実)

被告人山形は、日本社会党員であつて、茨城県労働組合連盟のオルグ兼組織部次長茨城県地方最低賃金審議会委員等をしているもの、同三次は、茨城県農業協同組合中央会笠間支部に勤務する団体職員であつて、茨城県労働組合連盟傘下の茨城県農業協同組合労働組合連合の中央委員、茨城県農業協同組合中央会労働組合の副委員長兼執行委員をしているものであり、いずれも昭和四〇年七月四日施行の参議院通常選挙に際し、茨城県地方区から同年六月一〇日立候補した大森創造の選挙運動者であるが、

第一、被告人山形は、右選挙運動の期間中である同年六月一八日水戸市藤沢小路三五八番地茨城県労働組合連盟事務所において、三次甲子男(相被告人)に対し、笠間市周辺の農業協同組合職員等に配布させる目的で、右大森候補の氏名、写真及び明るく豊かな生活をと題する同候補の挨拶記事、私のあゆんだ道と題する同候補の経歴記事、保守も味方にする大森君と題する参院議員森元治郎の推薦記事等を掲載した法定外選挙運動文書である一九六五年六月三日付の「参院選挙特集社会新報活動版」三一四部(証第一四、七号)を頒布し

第二、被告人三次は、右選挙運動の期間中である前同日笠間市稲田八七五の二番地稲田農業協同組合事務所において磯澄に対し同組合職員等に配布させる目的で前記法定外選挙運動文書である六月三日付の「参院選挙特集社会新報活動版」二二部(証第四号)と公職選挙法第一四二条の禁止を免れる行為として右大森候補の肩書、氏名の記載された名刺三九枚(証第五号)を次いで同市東電笠間営業所において吉原六三に対し、同営業所職員等に配布させる目的で前記法定外選挙運動文書である六月三日付の「参院選挙特集社会新報活動版」四五部(証第七号)と公職選挙法第一四二条の禁止を免れる行為として右大森候補の肩書氏名の記載された名刺五七枚(証第六号)をそれぞれ配布して頒布し

たものである。

(証拠の標目)<省略>

(法令の適用)

法律によると、被告人山形の判示所為は、公職選挙法第二四三条第三号、第一四二条第一項第二号、罰金等臨時措置法第二条に該当するので、所定刑中罰金刑を選択し、また被告人三次の判示所為中、法定外文書頒布の点は、公職選挙法第二四三条第三号、第一四二条第一項第二号に、同法第一四二条の禁止を免れる行為の制限違反の点は同法第二四三条第五号、第一四六条第一項、罰金等臨時措置法第二条に該当するところ、これを公職挙法第二四三条の包括一罪として処断することとし、所定刑中罰金刑を選択し、いずれもその金額範囲内において、被告人山形、同三次をそれぞれ罰金一万円に処し、被告人両名が右罰金を完納することができないときは、刑法第一八条を各適用し、いずれも金四〇〇円を一日に換算した期間、当該被告人等をそれぞれ労役場に留置すべく、なお被告人等の本件犯行の動機、態様からみて、特に悪質な選挙事犯と認められないし、それぞれの経歴、犯行後の行状その他諸般の情状にかんがみ、被告人両名に対し、公職選挙法第二五二条第一項の選挙権及び被選挙権を有しない旨の規定は、これを適用しないこととし、訴訟費用は、刑事訴訟法第一八一条第一項を各適用し、証人鈴木澄保に支給した分は、被告人山形に負担させ、証人青木加代子、同磯澄、同高野睦、同中森甚蔵、同木下昭、同磯崎勇、同平塚文雄に各支給した分は、被告人三次に負担させ、証人西野利夫、同宇野文恵に各支給した分は、被告人両名に負担させることとする。

(当裁判所の見解)

弁護人は、判示参院選挙特集社会新報活動版が、日本社会党の機関紙であり、公職選挙法第一四二条のいわゆる法定外選挙運動文書でない旨縷々主張するので按ずるに、判示参院選挙特集社会新報活動版が、日本社会党機関紙局から発行された日本社会党の機関紙であることは、まことに所論のとおりであるが、右社会新報活動版の第一面には、判示のように参議院選挙に立候補した大森創造の氏名、写真及び明るく豊かな生活をと題する同候補の挨拶記事、私のあゆんだ道と題する同候補の経歴記事、保守も味方にする大森君と題する参院議員森元治郎の推薦記事等が掲記されていることが認められ、その掲載内容をみると、これが判示参議院選挙に立候補した大森候補に関する報道及び評論を掲載したものであり、判示選挙に関するものであることが明らかである。しかして、公職選挙法第一四八条第一項は「新聞紙又は雑誌が選挙に関し報道及び評論を掲載するの自由を妨げるものではない」旨規定し、新聞紙又は雑誌が選挙に関し、報道又は評論を掲載することの自由を保障し、また同条第二項は「新聞紙又は雑誌の販売を業とする者は前項に規定する新聞紙又は雑誌を通常の方法で頒布することができる」旨を定め、特に新聞紙又は雑誌の販売を業とする者に対してのみ、これが通常の方法による頒布が認められ、頒布の自由が保障されているけれども、これが販売を業とする者以外の通常人がこれを頒布することは法の禁止するところであり、従つて、販売を業とする者以外の通常人が、これを頒布すれば、同法第一四二条違反の刑責を免れないというべきところ、被告人両名が、いずれも日本社会党の機関紙である社会新報の販売を業とする者でないことは、証拠上明らかであつて、右にいわゆる販売を業とする者以外の通常人というべく、かつ本件において、前記のように大森候補に関する事項を報道し、かつその候補を推薦するような評論を掲載した判示参院選挙特集社会新報活動版が選挙運動のために使用する文書図画たる性質を有し、これを頒布したというのであるから、法定外選挙運動文書の頒布として、同法第一四二条違反の刑責を免れず、もとより、弁護人主張のように同法第一四八条第二項の新聞紙又は雑誌の販売を業とする者が、通常の方法以外の方法により頒布した場合に該当しないこともまた、明らかであるので、判示のように認定した次第である。(高野平八)

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